当院は花粉症に対するステロイド注射治療を行っておりません。

当院は花粉症に対するステロイド注射治療を行っておりません。
花粉症の症状を抑えるために、ステロイド注射(ケナコルトなど)を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、当院では 花粉症に対するステロイド注射治療は強く非推奨と考えています。
その理由について、日本耳鼻咽喉科学会および厚生労働省の見解を基に説明いたします。

ステロイド注射のリスクとは?
ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)を筋肉注射することで、短期間で症状が緩和されることがあります。しかし、この治療法には 重篤な副作用 のリスクが伴います。
主な副作用
感染症のリスク増加(免疫力の低下による)
糖尿病や高血圧の悪化
骨粗鬆症の進行
消化性潰瘍のリスク上昇
顔が丸くなる(満月様顔貌)
白内障・緑内障の悪化
女性の場合、生理不順
精神的な不安定(うつ症状・不眠など)
このような副作用は 一度投与してしまうと長期間(数ヶ月~半年以上)持続する ため、途中で効果を中断することができません。
最新の医学的知見に基づき、真摯にアレルギー診療を行う医療機関では、決してこの治療法を採用しません。一時的な症状の軽減のみを目的とし、安全性を無視した治療は、患者さんの長期的な健康に悪影響を及ぼす可能性があるためです。当院では長期的に患者さんに不利益のある治療は決して選択しません。

「毎年打ってるけど大丈夫」は本当か?
「そんな大げさな。毎年打ってるけど大丈夫だよ」 という方もいるかもしれませんが、上記の副作用が出ているか、自分でわかるでしょうか?
注射部位の陥没や生理異常は目に見えてわかるかもしれませんが、それ以外の副作用(骨密度の低下、副腎機能の抑制、眼疾患の進行など)は、なかなか自分では気づけません。そして 一度発症してしまうと治療が難しい副作用が多い ことも問題です。飲み薬であれば途中で中断することもできますが、注射薬の場合途中で取り出すことができず、副作用が出ても中断できないという大きな問題があります。

厚生労働省の見解
厚生労働省のホームページによりますと、
デポステロイド筋注は保険で認められていますが、問題は副作用です。 ケナコルトAを1バイアル(40mg)筋注すると、血中濃度は筋注後3時間でピークに達し、その後3週間まで有効濃度が維持されます。一方、血中コルチゾール値は筋注後2週間の間0となり、副腎皮質機能の抑制は3~4週間続きます。
また、排卵に与える影響については、卵胞期初期に投与した場合、排卵は2週間以上抑制され、再開は3~6週後になると報告されています。2000年に行われた花粉症患者545名を対象とした調査では、12.7%が本治療を受けた経験がありましたが、その効果に対する満足度は他の治療法と比較して低く、1シーズンに3回以上筋注を受けていた方が37.5%、さらに副作用について説明を受けていた方は40.6%にすぎませんでした。
他に副作用の少ない治療法が多数あるため、本治療法は一般的にはすすめられません。”と記載があります。


つまり、 噂ほど効果があるわけでもなく、不可逆性の副作用があるため、リスクと見合わない治療 だということです。
また、Yahoo!ニュース(堀向健太氏) の記事でも、ステロイド筋注の危険性について詳細に解説されています。この記事では、医学的なデータを基に、なぜこの治療法が推奨されないのかが明確に述べられています。

当院での花粉症治療について
当院では、より 安全で効果的な花粉症治療 を提供しております。
おすすめの治療法
抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬の内服(眠気の少ない薬もあります)
ステロイド点鼻薬(局所的に使用するため、副作用が少ない)
舌下免疫療法(根本的な体質改善を目指す治療法)
花粉を防ぐ生活習慣の指導(マスク・メガネの活用、室内環境の整備など)
ゾレア(オマリズマブ)(重症花粉症に対する最新の生物学的製剤)
特に 舌下免疫療法 は、花粉症の根本治療として注目されており、当院でも積極的に取り入れています。
また、ゾレア(オマリズマブ)は、重症花粉症に対する最新の生物学的製剤であり、近隣の診療圏では対応できる施設が限られています。当院では、この最新治療を提供し、患者さんにより良い治療選択肢を提案できるよう努めています。

まとめ
多くの医療関係者や専門家が「危険だからやめるべき」と警鐘を鳴らしているステロイド筋注ですが、それでも受けるかどうかは最終的には患者さんご自身の判断になります。しかし、これらのリスクを正しく認識し、 副作用の可能性や寿命を縮めるリスクを理解した上で選択することが重要 です。
当院では、患者さんの健康を第一に考え、 長期的な不利益のある治療は決して行いません。花粉症治療についてお悩みの方は、安全で効果的な治療法についてお気軽にご相談ください。